狐と嫁と溺愛と
あたしはそんなこと言えない。



「猫の分際でうちの敷居を跨げるとでも?」

「そんなの関係なくない?友達じゃん」

「笑わせるなよ。俺たちはこんなバカ達とは違うんだよ」



そう言って教室から出て行った。



妖の世界はわからない。



やっぱり、龍之介くんはいい人じゃないのかな…。



タマキさんを好きになって、タマキさんも一時心を許した相手だよ?



「フラれた気分だな、あたし…」

「俺が慰めてやる?」

「はぁ⁉︎志鬼に慰められるようになったら終わり〜。ありえないから」

「なんだよ、かわいくねぇな‼︎うちの実家に招待してやろうと思ったけどやめた‼︎」

「いいね。あんたらは居場所があって。あたしはこのまま一生フラフラすんのかな?」



志鬼くんをスルーした春乃は、少し寂しそうだった。



気持ちはわからなくない。



あたし、大河さんに捨てられたら行くとこないもん。



実家だって、あたしにはないから。

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