狐と嫁と溺愛と
しばらく待つと、不機嫌オーラ全開の大河さんがやって来た。



「午後からのデータを高島が」

「あぁ…」

「昼食はどうしますか?」

「いらねぇ。うるせぇ。話しかけんな」

「奥様がお見えです」

「なにっ⁉︎それをいちばんに言えよ‼︎」



基本的に人間の姿になると口調も性格も柔らかくなるのに。



めっちゃ機嫌悪かったよ?



「どうした、ナナ」

「高島さんが会社に行くって言うから…着いてきちゃった…」

「マジ嬉しい…。あっ、昼メシ食う?社食のラーメンマジうまいけど」



食べないんじゃなかったの⁉︎



なんて聞けなくて、あたしの顔を見て笑顔になってくれたのが嬉しかった。



一緒に向かった社員食堂で、大河さんと座ると千尋さんがラーメンを運んできた。



「おいしいね‼︎」

「社長こだわりのラーメンですから」



ラーメン好きの社長がいる会社も大変だね。



そんな大河さんは、食べずにあたしを見ている。


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