狐と嫁と溺愛と
どこかで聞いたことがある名前だけど、思い出せない…。



ここはどこなの…?



「体が…動かない…」

「さっき人間用のクスリ使ったから。しばらく動けないだろうな」

「人間用…?」

「妖用は効かないだろう?」



この人は人間じゃない。



黒髪に黒い着物。



襟が赤く縁取られてて、瞳が吸い込まれそうな黒。



「あなたは…誰?」

「俺?知らないのか。それは残念」

「大河さんは無事なの?」

「まぁ、今頃怒ってっかも」

「あたしを…攫ったからだね…。あなた、消されてしまうよ…」

「スゲー自身だな。そういや、神の子なんだって?」



あたしのことを知っている。



誰だかわからないこいつは、きっと強い妖。



大河さんと常にいるからわかる。



この人は強い。



「俺にもくれよ、その力っての」

「なっ…」



動かない体。



いくら抵抗したくてもできない。



キス…されてる…。


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