狐と嫁と溺愛と
その後、やってきた見知らぬ男の人に注射を打たれた。



強い眠気に襲われて、起きていられない。



目が覚めると、また眠らされるの繰り返し。



「死んだらまずいからな。点滴で栄養は入れる」

「マジで面倒な生き物だな、人間ってのは」



そんな会話が聞こえて、また眠る。



体が痛い…。



眠くて動かせない。



腰が、背中が…痛いの…。



「ナナ、久しぶりね」

「お母さん…?」

「大変なことになってるみたいだけど、大丈夫?」

「ダメだよ‼︎体が痛い…」

「私は何もしてあげられない…。ごめんなさいね、ナナ」

「神様でしょ?助けてよ…」

「大丈夫よ。その役目は私じゃないから」

「大河さんが来てくれるの?」

「信じて待つの。もう、あなたに私は必要ないから。あなたの信じるものは…ひとつよ」



そう言って笑って消えた。



やっぱり薄情者だ。



陰陽師の血のこともあったし、肝心な時に助けてくれないし。


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