狐と嫁と溺愛と
何も話さない大河さんは、あたしの手を握ってこっちを向いた。



「さぁ、決めるのはお前だ。ナナの言葉に従ってやる」



えっ?



この判断をあたしがするの?



そんなこと絶対ムリ。



「でも…」

「被害者はお前だ。好きにするといい」



そう言われても、あたしにはそんな大きな決断は下せない。



大河さんのそばでただ話を聞いてればいいんだとばかり思っていたから…。



だけど、この場から逃げてはダメだ。



大河さんの妻として、意見を求められて。



そういう立場にあたしがいるんだと、初めて感じた。



「首なんて…いらない。大河さんだって、天狗の皆さんを傷つけた。あたしは生きてる。それだけが、答えです」



精一杯の意見を述べたつもり。



わかってもらえるかな…。



「緩いわよ、ナナちゃん。そんなんでいいの?このバカ、またあなたを攫って次は殺すかもしれないわよ?」



椿さんの言葉はもっともだと思う。

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