狐と嫁と溺愛と
でも、あたしはそんな究極の環境で生きてきたわけではない。



人の温かさや情を知りながら生活してきた。



「あたしにしたことや、大河さんをバカにしたことは許せません。だけど、誰かを傷つけてまで罪を償ってほしいとは思わない。それに、大河さんだってやり返してるんだから…喧嘩両成敗ってことで…」

「そうか、わかった。俺たちは天狗側に何も求めない。それでいいか?」

「うん、それでいいよ」



フワッと笑ってくれた大河さん。



間違ってないかはわからないけど、大河さんがそれでいいと言ってるようで、ホッと一安心。



「そういうことなら仕方ないわね。アズマ、これからの当主としての行動に気をつけることね。妖狐の当主夫人の好意を無下にするんじゃないわよ」




アズマに深く頭を下げられた。



本当に天狗側が悪いんだ…。



よくわからないけど、これでよかったかな?



「久しぶりの四役が集まった。ゆっくりして行ってくれ」



そう言った大河さんは、あたしを抱き上げて離れを後にした。


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