狐と嫁と溺愛と
みんなの前で抱っことか、恥ずかしいんだけど‼︎



「お、降ろして？」

「ナナは甘いな」

「うん…」

「アズマの嫁の命くらい、預かればよかったのに」

「預かる？」

「人質だ。こっちに置いて、不自由はさせない。ただ、屋敷に住まわせて、外には出さないだけで。代わりに、天狗は手を出せなくなる。それくらい、してもよかったんじゃないか？」

「可哀想でしょ…。奥さんにはなんの罪もないのに、好きな人と会えなくなるなんて」

「そうだな。俺はお前を差し出すようなヘマはしないがな」



部屋に着く寸前、チュッと頭にキス。



溺愛されてるよね、やっぱり。



「大河さんに会えなくなったら、生きてたくないよ…」

「俺もだ。お前に先立たれることが、いちばん怖いと思ってる…」



初めて聞いた、寿命のこと。



あたしばかり、老けるのがイヤだと思ってたけど、大河さんも同じ気持ちでいるみたいだ。



あたしなんか、すぐに死んでしまうんだろうな…。


< 447 / 582 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop