狐と嫁と溺愛と
アズマに囚われていた時の夢…。



今になって恐怖が襲う。



怖い。



大河さんのそばを離れるのが怖い。



「奥方様、開けてもよろしいでしょうか?」

「蘭月…さん?」



すーっと開いた障子から顔を出したのは蘭月さんだった。



どうやらあたしの部屋の外にいたらしく、声を聞いて何事かと…。



「大河さんは…」

「離れですが…」

「わかってるんです‼︎わかってるんだけどっ…ハァハァハァ…」

「奥方様⁉︎」

「大河さ…」



これは前にも味わった。



大河さんの傷を治した時に過呼吸になったのと同じ。



バタバタと部屋から出て行った蘭月さんを目で追うだけで、声も出せないしひたすら呼吸が苦しい。



どうしよう。



助けて、大河さん…。



「ナナっ‼︎」



ガタガタと震える手を伸ばすと、力強く引かれて抱きしめられた。



あぁ、これ。



この腕の中…。



「大丈夫、大丈夫だ…」



大河さんがいなきゃ…怖くて生きていけない…。


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