狐と嫁と溺愛と
大河さんがふたりを連れてきたのはお金に困ってたから。



「信用するものしかこの屋敷には入れないでしょ?」

「はい」

「私たちはね、再教育されたとでも言ったら聞こえがいいかしら…。体を売らなくてもお金を稼げる手段というものを教えてもらったの」



この屋敷で大河さんに支えれば、それなりの報酬と、自由が与えられると。



その代わり、裏切った場合は容赦しないとも。



「嫌じゃないんですか…?」

「どうして?好きな男も作れるし、お給料はいいし、ご飯は食べられるし、住む場所はこんなに素敵なお屋敷。最高の仕事よ?それに、主様が私たちに感謝してくれるから。好きなのよ、ここが」



荒んだ人生から抜け出せたと。



結婚して出て行くまで、大河さんに尽くそうと心に決めたみたいだ。



「ナツメさんは?」

「あの子はこの屋敷には紛れ込んでしまった座敷童子よ。行くところがなくて困ってたところを、主様が雇ったの。あちらの世界へ行けば、主様のお世話係りとしてゲスト扱いしてもらえるしね」



今は幸せなんだって。


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