狐と嫁と溺愛と
遠ければ酔う前に寝てしまおうと思った。



「20分程度で到着しますよ。おやすみになられるのでしたら、ちゃんと起こしますから」

「案外近いんですね…。少しだけ寝ます」

「そちらのひざ掛けをお使いください。ナナ様がおやすみになられたら窓を閉めます」



こんな年上のひとに、初対面の小娘が気遣われてる…。



なんだか罪悪感というか、申し訳ないというか…。



隣を見るとキレイに畳まれたブランケット。



村上さんのものではないだろう。



だってそれは、淡いピンクのフワフワの生地。



村上さんの私物だったら、ちょっと怖いくらい可愛らしい。



「ありがとうございます、お借りします」

「それはナナ様のために用意したものですので、お気になさらずに」



なんて優しいんだ、村上さん。



顔も知らない小娘に、こんな可愛らしいブランケットを用意しといてくれるなんて。



こんなに気遣いができる村上さんの奥さんは幸せ者だよ、きっと。



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