狐と嫁と溺愛と
その日の夜、お父さんが帰って、大河さんさんもお風呂に入って。



リビングで高島さんの淹れてくれたお茶を飲んでいた。



「大河さん、なに飲んでるの?」

「日本酒」

「お酒飲むの、珍しいね」

「ジローにもらったから。出張の土産だとかって」

「あたしにはお土産なんてないのにぃ…」

「ははっ」



柔らかい顔の大河さん。



こうして普通の会話ができるのが、なんだか不思議。



この家に来る前は想像できなかったな…。



「ナナ、来い」

「なんでっ…」

「急に甘くなった。大丈夫か?」



ドクン、ドクンと、心臓が脈打つ。



一瞬で体温が上昇し、体が燃えてしまいそう。



「暑いっ…」

「高島っ‼︎」



いつもと違う。



こんなに急に酷くはならないのに。



死ぬ、死ぬ、死んでしまうっ…。



慌ててやってきた高島さんがドアを開けていく。



あたしは大河さんに抱き上げられ、黒いドアの部屋。



大河さんの部屋だ…。



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