狐と嫁と溺愛と
意識が朦朧とする。



こんなに酷いのは初めてだ。



「薬、飲めるか?」

「…………」



答えられない。



飲めないよ、効かないし。



「どうしますか⁉︎先生を呼びましょうか⁉︎」

「頼む。俺は俺でどうにかしてみる」



苦しい。



熱い、眠い、死んでしまう。



息がうまくできない…。



「ナナ、お前の力、少しもらうぞ」



そう言った大河さんが、あたしにキスをした。



ファーストキスが死にぎわって、虚しいよ…。



「くっ…スゲ…。もっとくれ…」



熱が…引いていく…。



もっと、もっと…あたしからこの熱を奪って…。



どれだけしていたのかわからない。



あたしの体から熱が抜けたのはしっかり感じてる。



そして、唇を離した大河さんが、別人のような姿なのも、ちゃんと見えている。



「久しぶりだ、この姿…」

「大河さん…なの…?」

「まぁな。大丈夫か?」



綺麗な…アヤカシ…。



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