狐と嫁と溺愛と
黒い髪は白く伸びてキラキラしている。


瞳も、黒からグリーンへ。



耳も、見たかった尻尾も。



「尻尾…いっぱい生えてる…」

「九尾ってやつだからな。スエットでよかった…」



尻尾は一個でしょう‼︎



さっきまで死にそうだったのに、そんなことを考えるくらいの余裕ができている。



体に力は入らないけど、意識だけははっきりしていた。



しばらくして駆けつけた老人。



「これは当主様…。こちらの世界でそのお姿でお会いできるとは夢にも思わず…光栄ですな」

「一か八か、ナナに溜まっていた熱を喰ったら、戻れなくなった」

「それが神の力。高貴な当主様だからその程度で済んでいるんじゃよ」



どうやら、この人は妖怪のお医者さんらしくて。



数千年生きているらしく、この体のことも知っていた。



薬を作ってくれたのも、このおじいちゃんだそうだ。



「あと1ヶ月の辛抱です。覚醒すれば、熱の放出は勝手に体が行う。今は、耐えるしかないのですよ」



死ねってことか。




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