狐と嫁と溺愛と
せめてバスタオルくらいかけてほしい。



だけど、大河さんはそのまま部屋のベッドまであたしを運んだ。



気を失ってからどれくらい経ったのかな…。



全くよくなってない。



「ナナ?生きてんだろうな?」



頷くだけで精一杯。



声が出ない…。



「楽に…してやんねぇ」



えっ…?



いつもなら絶対してくれるのに。



「や…」

「ジローにはチョコあんのに、俺にはねぇし?あんなにイチャつかれると誰の嫁なのかわかんねぇよ」



なにそれ…?



ヤキモチみたい。



相手はお父さんなのに。



お父さんにチョコあげただけだよ?



お願い、辛いよ…。



「そのまま寝とけ」



そんなっ…。



涙が溢れた。



行かないで…。



「たいっ…」

「ムリだ。ムカついてるから」



大河さん…お願い…。



あたしもう…限界…。



「うっ…」



気持ち悪くて吐きそう…。



ひどいめまいでトイレまで行くなんてムリ。




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