狐と嫁と溺愛と
嫌いなのに。



あんなことされたのに。



心臓がギュッと掴まれてるようだ。



あたしはこの人を…憎めない…。



なぜかそう感じてしまい、顔に熱が集まる。



「気持ち悪くねぇか?」



小さく頷くと、大河さんはあたしの体を起こして、支えるように後ろにまわっまた。



抱きしめられてるかのように、たくさんの尻尾があたしの体を包み込む。



「妬いたんだろうな、きっと…」

「どうして…?」

「さぁな。お前は俺の物だって、お前がジローに預けられた時から決まってたから。一応、17年、ナナを待ってた」



心臓がうるさい。



まるで告白されてるみたいで。



「俺が何年生きてるか知ってるか?」

「何年…?」

「164年だ。その中の17年なんて、あっという間だったけど。それでも、俺はお前を待ってた」



そんなに生きてるなんて知らなかった…。



きっと、いろんな経験をしてきたんだろう。



あたしには想像もできない年月…。



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