狐と嫁と溺愛と
体にかかる白いフワフワの尻尾を撫でた。


「好きな人とは、結婚しなかったの?」

「しようとした。昔の話だけどな。普通の人間を好きになった。でも、人間は脆い…」




先に死んでしまったんだろうか。



この人に愛される女の人は、どんな人だったのかな?



「ナナは…裏切るのか?俺を…」

「えっ…?」

「嫌われてんだもんな、俺。裏切るもクソもねぇか…」




一瞬、尻尾の絡まりが緩んだ。



あたしの体を支えていた物が、急になくなって。



パタリとベッドに沈んだ大河さんの体。



「大河さんっ⁉︎」

「喰いすぎただけだ…。昨日と今日、2日連続はちょっとキツイ…」



そのまま目を閉じてしまった。



スースーと聞こえた寝息。



寝てる…。



いつもと逆のシチュエーション。



長くて白い髪が顔にかかっていて、無意識に退かすと、少し笑ったように見えた。



こうして眠っていると、カワイイんだな…。



耳も尻尾も、カワイイ…。



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