ミルト
彼女はすでに
着替えいた。
髪から軟らかいシャンプーの香りがする。
机には
二人分の夕食があった。
どうやら
車椅子に乗ったまま俺の分も作ってくれたらしい。
いつも俺が作るから
姫喜は料理をほとんどしない。
だが
やろうと思えば並にはできる。
「…待ってくれてたのか」
二人分の夕食は
どちらも手をつけた形跡はない。
スーっという寝息が聞こえる。
振り向いて見ると
彼女の後ろに家族写真がある。
………
…なんで俺、
気づいてやれなかったんだろう。
アイツのことは一番俺が
知っていると思ってた。
今姫喜の家族としている
おばさんは単身赴任だし他に家族はいない。
だから
俺が姫喜の側にいよう。
…そう、
決めたのに。
一番に心配してやれる
そんな存在に、
一番にきづける
そんな存在に、なろうと思ってたのに。
…………
今度から一緒に食べよう。
なっ?
俺は姫喜の髪を
耳にかけた。