ミルト
寸前になって
俺は悩んだ。
『さて、
何を願おう。』
とりあえず
財布を取り出した。
中身を見ると
スッカラカン。
あるのは
千円札二枚。
…両替機なんてねぇしなぁ。
俺はまた悩んだ。
―― ス ッ ――
俺の目の前、
手のひらに乗った五円玉があった。
白く小さな手。
自然と
顔を上げようとした。
靴も服も
さっきまで見ていた鰹節カップルの彼女と
同じものだった。
近くで見ると
余計小さく見える。
俺はゆっくりと
顔を上げた。