ミルト










寸前になって
俺は悩んだ。






『さて、

何を願おう。』









とりあえず
財布を取り出した。


中身を見ると
スッカラカン。







あるのは
千円札二枚。


…両替機なんてねぇしなぁ。







俺はまた悩んだ。












―― ス ッ ――









俺の目の前、
手のひらに乗った五円玉があった。


白く小さな手。








自然と
顔を上げようとした。



靴も服も
さっきまで見ていた鰹節カップルの彼女と
同じものだった。



近くで見ると
余計小さく見える。











俺はゆっくりと
顔を上げた。



< 147 / 206 >

この作品をシェア

pagetop