ミルト
エレベータを出た俺の前に姫喜が
いた。
思わず、
声が出た。
にも関わらず
彼女は一切気づいていないようで、
そのまま家へ進む。
どうやら
俺の存在にも気づいていないらしい。
なんか
それは悔しくて名前を呼んだ。
でも、
彼女は振り向いてくれなかった。
玄関の前に来て
優雅に鍵を回している。
俺はなんだか
イライラした。
スタスタ歩き、
彼女の肩を持って俺に向かせる。
驚かなかった。
喜びもしなかった。
無だった。
彼女の目は
俺のことなんて映ってもなかった。
目が合うはずもない。