ミルト
少し伸びた前髪を
横に流し、
長すぎた髪は
ちょうど良い長さに整っている。
肌は
白いというか青白い。
それに
たいぶ痩せた気がする。
触れた肩も
昔より小さい。
元々長いまつ毛は
彼女とのアイコンタクトを阻止させているように見える。
昔の彼女は
どこに行ったのだろう。
見当たらない。
驚いたのは
彼女じゃなくて俺の方だ。
この前
会ったばかりなのに。
『なに?』
少し起こった様子で
俺を見る。
まるで
物の風雅な含蓄に目を凝らしているかのような
眼差し。
俺は
耐えられなかった。
ついつい
目を反らしてしまった。
その瞬間、
彼女は腕の中をすり抜けるようにして
玄関へ消えた。
咄嗟に
腕が伸びた。
「ちょ、待てよ」
なんて、
キム〇クみたいなセリフまで言っている。
でも、
彼女は振り返らなかった。
「…そのままでいいから、」
俺は
何を言おうとしているのだろう。
何か
伝えたいことあったっけ?
うん、まぁ、そりゃあ
話たいことはある。
だからと言って
全部話すわけにもいかない。
それに
本当に伝えたいことはそんなにない。