ミルト
――すっ
と
彼女の手が耳から離れた。
それから
俺をゆっくり見上げた。
「どうしよう?」みたいな顔で見てくる。
どうしよう?って
こっちがどうしよう?だよ。
ここまで連れてきたはいいけど、
それが正しかったのかはわからないし。
ここって
来て良かったところなのかもよくわかってないし。
彼女が
なにか言ってくれないと、
俺は善か悪かさえも知れないのだ。
願うなら
善がいいけど。
「…」
彼女は
いくら待っても口を開かなかった。
変わりに制服のポケットから
携帯電話を取りだし、
なにか
打っている。