ミルト
『ありがとう』
メールの画面にかいてある。
俺に携帯電話を押さえつけるように
見せてきたので思わずそれを手に取った。
俺も
彼女の携帯電話に文字を打つ。
『大丈夫か?』
彼女は
うんとうなずいた。
『俺は聞いてもいいのか?』
しばらく、
彼女は固まっていた。
が、
数秒だったが数分だったがわずかな時間で
彼女は答えを出した。
『私、耳が聞こえなくなりました。』
恐る恐る俺を見てくるので
俺は困ったように笑った。
彼女が
くれた笑顔だ。
びっくりするもなにも
薄々気づいていたので表情には出さなかった。
『中学卒業してすぐに片方聞こえなくなって、もう片方もあまり聞こえてない』
『一年生のときは耳鳴りとかひどくて学校もろくに行けてなかった』
『自分の声もよく聞こえないから喋るの上手くできない』
『それで色々あって学校行けるようになってからも結局行けなかったりしてた』
それだけの文を
なかなかのスピードで打った彼女。
その彼女から
携帯電話を奪う。
『空とは?』
そこまで
打って彼女に見せるかどうか悩んだ。
でも、
画面を覗き込んできたので悩んでいる間に
見られてしまった。
その画面にうつら文字をみて、
キョトンとした。