ミルト
第四章
よかったんですか?
僕が聞くと
彼女は笑った。
彼女は笑って
左手の小指を見せた。
ここに付き合っているかぎりは
指輪をつけておこうって二人できめたの。
彼女はそう言ったが、
その小指には指輪なんてものはない。
今日ははじめからつけてないよ。
少し悲しそうな顔をして
彼女は自分の小指をなでた。
僕は
後ろで聞こえる彼らの声に耳を傾けた。
…良かったですね、姫。
ふいに、
涙がこぼれた。