ミルト


「おはようございます、王子。

上靴です。

あっ、お鞄お持ち致します。

あっ、段差にお気をつけ下さい。」





朝学校に行くと
姫喜がまるで下僕の様に働いていた。





「ひっ姫!

何をなさっておられるのですか。


姫こそ段差にお気をつけ下さい。」








空が手をとる。


二人してニコニコと
爽やかな笑顔を皆に見せている。







最近では
こんな光景を見るのに慣れてきた。


毎朝毎朝、
こんな茶番を繰り広げている。







「王子、
今日のご予定は?」



「あぁそうだ。
姫、先ほど先生が呼んでましたよ?」







ずっとこの調子だ。


多分
王子とか言い出したのは姫喜からだと
思うが…。







「では王子、
わたくしはここで失礼致します。」


「では姫、
のちほど」







手の甲にキスする。


その行為には
さすがの姫喜も動揺する。







役者魂かなんだか知らんが
すぐに姫に戻り

「では」

と会釈をして歩いていった。





顔を赤くして
演技をするのはやっぱりちょっと可愛い。


とか
思ってしまう。











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