ミルト


「ピーポーピーポー」







人も少ない放課後、
用があって学校に残っていた。


俺は
早く帰って夕飯の準備をしたかったので廊下を走っていた。


すると
後ろの方から救急車の音を真似してくる奴が
いた。







「ピーポーピーポー

警察だぁ、
そこの逃走車止まりなさぁーい!」








パトカーの音
じゃないだろ、

というツッコミはあえてしなかった。





俺は止まって
姫喜に振り返った。


姫喜は
メイド服と呼ばれる何かを着ていた。







「どお?
似合う?」






頭のリボンを摘まみ
なにかしらのポーズをとっている。


似合っているといえば
似合うがメイドよりも姫のドレスの方が似合いそうだ。







「…ふつう」

とか言いつつも
顔を真っ赤にしている自分にちょっと笑う。





「えいっ」そう言って車輪を回し
距離を縮めた彼女が
頭に付けていたリボンを俺につけた。


すぐに取ろうとしたが
どこにあるのかわからない。









諦めて
俺は彼女を見つめた。


それを待っていたかのように
笑い「未来花の方が似合うね」と言う。







俺は頭に
軽くチョップした。


すると頭をおさえて小さくなった。














「ほら、
帰るぞ」

でも彼女は頭を振った。







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