ミルト


「私、まだ用事があるから…」

耳をいじった。


出た、
嘘つくときに耳をいじる癖。








なぜ
そんなことを嘘をつくのだろうか。


そんなに俺と帰るのは
嫌なのか?








特に用事の内容も聞く気がない
というか
聞く勇気がでなかったので体の向きを変えた。










「早く帰ってこいよ」









それだけ言って
走った。



後ろの方で
姫喜が叫んでいる。


最初は無視しようとしたけど
あまりにも呼ぶので振り返った。







「未来花! 頭!!」









俺は黙って
リボンを取った。












そして走る。











――
視界の端に
誰かの影が写ったが

誰かはわからなかった―――。







< 82 / 206 >

この作品をシェア

pagetop