years
次に会えたのは冬休みか、冬の始まりの休日だったかもしれない。
すっかり季節は変わっていた。
話すのもしばらくぶりで、お互い無言だった。


彼の家まで行って、近くにショッピングセンターが出来たので少し歩き回ったけど、特に面白いものもなく、元来た道を戻る。
相変わらず無言。
漫画やアルバムを借りたいと言って会う約束を取り付けたけど、趣味が本当は違うから共通の話題がなかった。
元々彼は無口で、私が話さないと会話にならない。
久しぶり過ぎて、何を話したらいいか分からず途方に暮れる。
無言の空気に焦りながら、彼のうしろをついていくしかなかった。


その時ふと、彼が振り向いた。
その格好じゃ寒いだろう、と突然言ってきた。
寒くないか?と聞いてきたのかもしれないけど、相手からは寒がっていると断定されていた。当時どんな服装をしていたか覚えてないけど、少しでも印象の良い服装しよう、と頑張っても、そこまで寒い格好はしていなかったのを記憶している。
だから、その問いかけにどう答えたらいいか分からなかった。


答えるか答えないかうちに、彼はトレーナーを脱いで、着ろと言って私に渡した。
半袖Tシャツになった彼は、また悠々と歩いていく。
先の読めない行動に出る相手の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、私はついていくより他になかった。
このくらいの涼しさが丁度いい、目がさえると言っていた彼を、あっけにとられて眺めていた。


普通に車通りの多い道の歩道で、人目があるようで恥ずかしかった。
だけど、着たことのない大きなサイズのその上着は、着てみると軽くて暖かくて、ホッとした。


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