years
一時間以上はかかったと思う。
学校まで、2人無言で歩いた。
途中の公衆電話でやっと親に電話が繋がり、学校に迎えに来てもらうことになった。
こんな時間に学校とか、どう言い訳しようとか思いながら、更なる途方に暮れつつも、今は彼がいるから歩こうなんて思いながら、進んだ。


辿り着いた学校は、真っ暗。
校庭のライトも消えていた。
もう着いちゃったのか…なんて途中の不安も忘れて私はそんなこと考えていた。
彼は、何を考えているんだろうか。
こんな遠くまで、夜遅くにクラスメートの私を送って。
大人過ぎるだろう。
今頃なんて、みんなおうちでテレビでも見て出てこない。


色々聞きたいことあったけど、経験値の差に圧倒されて聞けなかった。
彼は落ち着いたような雰囲気で、校庭を見ていた。
話題もなく、時間が過ぎるのがもったいなくて、あの星は金星だ、なんとかだなんて無理やりネタを作って、二言くらい話をした。
だけど、殆どそれ以外は会話がなかった。


しばらくして、親が迎えに来た。
彼も自転車を学校に置いて、親の迎えを呼んでいた。
もしかしたら彼の方が迎えが早かったかもしれない。


私は、夜10時半か11時に学校にいることを親からとんでもなく怒られるかと思ったけど、お互い行き違いになっていたらしく、携帯も持ってないし仕方ないということで、意外にも怒られることなく帰宅出来た。
それはとても珍しいことだったので、なんだかわからないけど、彼には感謝せずにはいられなかった。
ちなみに彼は、友達に呼び出されたと言って出てきたものの、帰りの車の中でおばさんに、わたしに関係があるのではと微妙に追求されたらしい。


わたしの存在は、お見舞いと電話でしか知られていないし、特に親しい姿も見せていない。
あの母親はたまに恐ろしい勘を見せることあるとか言っていた。
普通の顔して来てくれたけど、もしかしたら実は細心の注意を払って出てきたのではないかと思うと、申し訳なくも、ありがたく、どうしてそこまでしてくれるのか不思議で仕方ない。


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