years
静かに泣き止んで、彼の部屋に戻った後のことは覚えていない。
彼は私の様子の少しくらいは感じていたかもしれない。
だけど、何事もなく回答も得られず、時間は終わった。
虚しかった。


そこから、彼にとって私ってなんだろうと考えるようになり、あまり近づかなくなった。
せっかく新しく買った服も、意味がない。


その後、部活の先輩達との会話に楽しさを見いだし、好きな音楽が共通の先輩と一緒に帰ったりして彼のことから頭を離そうとした。
もう忘れようと、好きと言ってくれる子と付き合おうともした。
だけど、あるときふと学校で彼の姿を目にしたとき、遠くなのに息が止まりそうになるほど、存在の確かさに体の動きが止まった。


泣きたくなった。
あれだけ虚しい思いを味わっても、彼が好きな自分を知った。
それまでしていた逃避行動が、彼を目の前にして全て意味を失った。


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