水平線にとどく唄
 クウとお父さんが家に帰ると、みんながクウを見ます。
「お母さん、心配かけてごめんなさい」
 クウは正直に、お母さんに謝りました。
「けれど、僕は嘘は言ってないよ。シャロンはいい子なんだ」
 クウの言葉に、お母さんは「うんうん」と言って頷きました。

「お母さんはシャロンという子は知らないけど、クウが言うのだもの。きっと素敵な子なのね。けれど、人間はこわい生き物だということは覚えておいて。お母さんは、クウがこわい目に遭わないかとすごく心配なのよ」
「うん。悪い人間もいるって、お父さんも言っていたよ」
 優しいお母さんの隣に、クウは寝転びます。
 けれど、寝ようとしてもシャロンのことが頭から離れません。

 友だちがいないと言っていたシャロン。友だちだと言ってくれたシャロン。
「僕は友だちがいるけど、シャロンは友だちがいないって言っていたんだ。だから、友だちになってもいいよね?」
 クウが聞くと、お母さんは優しい声で言いました。

「そうね。けれどシャロンはあの島のお姫さまなのよ。だから本当はクウには会えないの」
「何で友だちなのに会えないの? 人間でお姫さまだと無理なの?」
「ごめんね。クウ。会いたいかもしれないけど、駄目なのよ」
 何だか難しい話だなとクウは思いました。けれどずっと友だちなら、また会えるはずだとクウは思いました。
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