水平線にとどく唄
 次の日、クウはポカポカあたたかくて気持ちがいい午後の海にいました。
 たくさん海藻を食べて、たくさん運動して、お父さんみたいな大きくて強い優竜になろうと頑張っています。
 そんなクウは、いつもより離れた場所へ行って海藻を食べはじめました。

 嵐で遠くまで流されたり、森に入ったり。
 ちょっとした冒険をしてきたクウは、すこし大人になっていたのです。
「ここの海藻はやわらかくて美味しいなあ。帰ったら、みんなにも教えてあげよう」
 おなかいっぱい食べて満足したクウは、浅瀬にいる小魚たちを追いかけて遊びます。
 海ガメと並んで泳いだり、いたずらしてカニに指をはさまれたりもします。

 時間も忘れて、たっぷりと遊んだクウは、そろそろお母さんも心配している頃だろうなと思って戻ろうとしました。
 その時です。どこからかたくさんの笑い声が聞こえてきました。
 優竜の声ではありません。それは人間の声です。
 優しいシャロンと話していたクウですから、はじめはシャロンの友だちがきたのかなと思いました。

 それでも、お母さんに人間はこわい生き物と教わっていたので、クウは潜りながら声のほうに近づいていきます。
 海面からすこし顔を出したクウが見たもの。それは大きな帆をつけた船でした。
 その船の上でたくさんの人間が何かを飲みながら話したり、笑ったりしています。
 そして、その船は、がいこつの絵の黒い旗をつけていたのです。
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