水平線にとどく唄
 がいこつの絵の旗を見て、クウはこわいと感じて震えました。
 船の上にいる人間たちも優しいシャロンとは違う感じがします。
 風にのってくる臭いもいい香りではなく、鼻を突くようなクウが嫌いな臭いだったからです。 それはクウの知らないお酒の臭いでした。

「見てくれよ。新しい武器を買ったんだ」
 ひとりの人間が何かを出すと、他の人間たちに見せます。
「へえ、いい銃を買ったんだな。それなら、お姫さまもこわがらせることが出来るかもしれないな」
 その人間に続いて、船の上では「俺の武器も見てくれよ」という話が繰り返されます。

 ――お母さんは、悪い人間は体を切り裂く刃物や体を貫く鉛の玉を持っていると言っていた。だから、ここにいるのは悪い人間たちなんだ。
 クウは、これがお母さんが言っていた人間なのだと思いました。
 そして、クウは人間がお姫さまと言っているのが気になって、更に慎重に近づきます。
 クウの大切な友だちのシャロンはお姫さまですから、何かされるのではと思ったのです。

「俺たちは海賊なんだ。たくさん酒を飲んで、人の者を奪い取る。明日はあの島に上陸して、王の大切なものをいただいてやろう」
 人間がシャロンのいる島を指差しながら、そう言いました。すると他の人間も武器を手にしながら腕を突きあげます。
「王を倒して、俺たちの強さを思い知らせてやるんだ!」
 クウは人間たちの雄たけびを聞きながら、ただただ震えることしかできませんでした。
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