水平線にとどく唄
 ――僕の友だちのシャロンが危ない。助けないと。
 そう思ったクウは、人間たちに気づかれないように、その場を離れました。
 大きくてもクウは優竜の子どもです。
 たくさんの仲間たちが人間に殺されていると聞いていたので、自分ひとりではかなわないとわかっていたのです。
 クウは強いお父さんに話をして、シャロンを助けてもらうことにしました。
 大人の優竜たちなら、あの海賊という悪い人間たちを、こらしめることが出来ると思ったのです。

「お父さん。お父さん!」
 家に戻ったクウは、お父さんを呼びます。
 お父さんはクウを見て、大変なことが起きたと気づいてくれたのか、駆け寄ってきてくれました。
「クウ、そんなに慌てて何があったんだ?」
「悪い人間たちが島の裏側にいて、シャロンをこわがらせようって話をしているんだよ。だから、お父さん。あの人間たちをこらしめて」
 クウが話すと、なぜか、お父さんは困った顔をしました。
 大人の仲間たちも唸り声を出し、クウの友だちは震えます。

「クウ、人間がすることは人間だけが解決できるんだよ。わたしたち優竜は何もできないんだ」
 そして、お父さんの言葉は、クウをがっかりさせるものでした。
「何で? お父さんは、シャロンはいい子だって言っていたじゃないか。シャロンのお父さんも僕たちを助けてくれたって言っていたじゃないか」
「クウ、優竜がこの島にいることを海賊たちに知られるわけにはいかないんだ。そうでなければ、みんな殺されてしまうんだよ」

 お父さんと仲間が頷くのを見て、ようやくクウはわかりました。
 ――人間はこわい生き物。
 それは、海賊という人間たちだったのです。
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