水平線にとどく唄
 ――みんな、シャロンを助けてくれない。
 それを知ったクウは、ひとりで海賊の観察をはじめることにしました。
 気づかれないよう船の近くまでいって、海賊たちの話を聞きます。

「たくさんいたはずの恐竜たちはどこに行ったのだろうな。王様が隠しているに違いない」
「王様の娘のシャロン姫は奇麗な歌声の少女らしい」
 人間の言葉をわからないクウですから、全ての話は理解できません。
 けれど、海賊たちが悪いことを考えているというのはわかります。
 そして、海賊がクウたちのいる島の奥にこないのは、海賊たちの船が大きいため、浅瀬に入ってこられないからのようでした。
 優竜たちが住みやすく、人間には住みにくい場所。そういた場所を王様は優竜たちの住み家にしてくれたので、クウたちは今まで海賊に見つからないでいたのです。

 その時です。クウは後ろに気配を感じて、慌てて振り向きました。するとそこには一番仲のいい友だちがいました。
「クウ、人間に近づいたら駄目なんだぞ」
 すこし怒った顔で友だちに言われます。
「わかっているよ。だから気づかれないように遠くから見ているんだ」
 クウの言葉を聞いて、友だちは「ふーん」と言うと、クウと同じように人間たちを観察しはじめました。
 海賊の船のちかくに子どもの優竜の影がふたつ。それはしばらく離れていた優竜と海賊が近づいた、不思議な光景でもありました。
 そして、海賊の話を聞いていると、恐ろしい話が聞こえてきたのです。

「今晩、城を襲おう。そして隠している優竜の居場所を王様から聞き出すんだ。その時に、お姫さまも連れていこう」
 海賊たちの話にクウと友だちは顔を見合せます。
「どうしよう。僕たちどうなっちゃうんだろう」

 隣にいる友だちは震えるだけです。それを見てクウは思いました。
 ――シャロンは大切な友だち。そして怪我を治療してくれた人。僕がシャロンを助けないと。
 クウはそう決めたのです。
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