水平線にとどく唄
 クウがなくと、歌がとまりました。
 そして、窓辺にいたシャロンがクウを見ます。
「クウ、またきてしまったの? こわい人間もいると教えたのに」
 近づいたクウをシャロンは優しく撫でました。
 けれど、今はシャロンに海賊が来るということを教えなくてはいけません。
 クウはシャロンの服のすそを噛んで引っ張ります。
「ごめんね、クウ。危ないという理由で、外で遊ぶことは許されていないの」
 けれど優竜の言葉は人間には通じません。
 もう一度、クウはシャロンの服のすそを引っ張りました。
「どうしたの、クウ。何かあったの?」
 ようやくシャロンは、クウが何かを教えたがっていると気づいたようです。
 クウは首を縦に動かしながら「クウ、クウ、クウ」と必死になって説明しました。
「何かあるの? けど大丈夫。私には、お父さまがいるから平気よ」
 はやくシャロンに城から逃げてもらわないと、海賊がきてしまいます。
 クウはシャロンの服のすそを引っ張ったり声を出したりしますが、シャロンには言葉が通じませんでした。
 もう時間がありません。クウはシャロンに伝えるのを諦めて振り返ります。
 すると、海に大きな船があるのが見えました。船には、がいこつの絵の旗があります。
 たいまつを手にした海賊たちが船の上にいるのが見えました。
「あの船は何? もしかして海賊?」
 シャロンも船に気づいたのか、震えながら言います。
 怯えるシャロンを見たクウは思いました。
 ――僕が何とかしないと。
 そして、シャロンに背中を向けると海に向かって駆けたのです。
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