水平線にとどく唄
 シャロンがクウを呼ぶ声が聞こえます。
 けれどクウは振り返らずに海を目指しました。
 優しいシャロンの顔を見たら、海賊と戦う気持ちがなくなってしまうと感じたからです。

 ――僕は人間よりも大きな生き物なんだ。尻尾で木も倒せるんだ。
 海賊たちは刃物や鉄砲を持っています。
 それでもクウはシャロンを守りたいという気持ちでいっぱいで、こわいとは感じなくなっていました。

 海に着くと、海賊たちの船が見えました。
 海賊たちは小船を出して島に向かう準備をしています。
 クウは海賊たちに気づかれないように海に潜ると、音を立てないよう小船に近づいていきました。
 クウが潜った水の上では海賊たちが小船に乗りながら、「王様を捕まえるは俺だ。お姫さまを捕まえるのは俺だ」と言い合っています。
 その小船の下にきたクウは一気にそこから浮かび上がりました。
 クウの頭が小船の底に当たったことで、海賊たちの乗る小船が次々とひっくり返ります。
 たちまち、その場は海賊たちの驚く声でいっぱいになりました。

「優竜が出たぞ」
「武器を用意しろ」
「網を投げろ」
「大砲を撃て」

 そんな海賊たちを睨みつけたクウは、自分を奮い立たせるために声を上げました。
「クオーウ」というお父さんの吠え声にも似た、クウの声が響き渡ります。
 ――シャロンをいじめる海賊たちは許さないぞ。
 そして、クウと海賊の戦いは、はじまったのです。
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