水平線にとどく唄
 金色の服を着た人間を押さえた海賊たちが声を荒げていいます。
「優竜の子どもがいるということは、大人もいるということだ。隠していないで教えろ」
 海賊の話を聞いたクウは、この人はシャロンのお父さんなのだと気づきました。
 優竜が安心して住める場所を与えてくれたというのが島の王様であり、シャロンのお父さんと知っていたからです。

「おい、隠れていた姫も見つけたぞ」
 その時、海賊がシャロンの手をつかみながら姿を見せました。
 シャロンは逃げようと暴れていましたが、王様とクウを見て動きをとめます。
「お父さま。それにクウも。二人とも捕まってしまったのね」
 王様とシャロン、クウを捕まえ、島の人たちからたくさんの物を盗んだ海賊たちは、悪そうな笑い声をだすと、船を動かす準備をはじめます。

 このまま静かにしていたら、海賊たちの思い通りになってしまいます。
 それなのでクウは網の中でも思いっきり暴れました。
 船に体をぶつけ、尾を船に叩きつけ、大きな吠え声を上げます。
 子どもといっても優竜です。クウが暴れると、海賊たちの船は揺れました。
 それでも相手は海賊です。暴れたクウに大砲の筒がむけられます。

 クウは驚いて、網ごと海に潜りました。
 その途端、大砲の弾が撃たれる音がして、大きな波にクウは襲われます。
 大砲の弾がつくり出す、まるで嵐のような激しい波です。
 クウは大きな音と波のせいで気持ち悪くなってしまいました。

「やはり、子どもの優竜だな。大砲で驚かしたら静かになったぞ」
 海賊の笑い声が聞こえても、気持ち悪くなったクウは動くことができません。
 そして、そのまま海賊の船は動きはじめ、島からどんどん離れていったのです。
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