水平線にとどく唄
 クウのお父さんたちの歌声が、海賊たちへの怒りの吠え声に変わりました。
 その優竜たちを見た海賊たちが船の上で慌てはじめます。
「大砲を用意しろ。弾込めよし。撃て!」
 激しい波をたててクウを気持ち悪くさせた大砲の弾が、クウのお父さんたちにむかって撃ちだされます。
 それを見た、クウのお父さんが「ガオーウ」と声を上げると、大砲の弾を尾で打ち返しました。
 その大砲の弾は、海賊たちの船の帆にぶつかると大きな音をたてて帆を折ります。

「大砲を撃つのは、やめだ。網を用意しろ」
 海賊のひとりが声をあげた時には、クウのお父さんと仲間たちの姿は見えなくなっていました。
「逃げたぞ。網に恐れをなしたか」
 海賊はいいますが、クウは知っています。
 クウのお父さんたちは逃げたのではなく、海に潜ったのです。
 途端に海賊たちの大きな船が揺れます。
 クウのお父さんが逃げたと思いこんでいた海賊たちは大混乱です。

「クウ、大丈夫? 網はゆるんでいるから、潜ると逃げられそうよ」
 揺れる海賊の船を見ていたクウに声がかけられます。それはクウの、お母さんでした。
 お母さんの言う通りにすると、クウは網から逃げることができました。
「さあ、はやくここから離れましょう。あとはお父さんが何とかしてくれるわ」
 お母さんに、そう言われたクウですが、首を横に振ります。

「僕の友だちのシャロンとシャロンのお父さんが、まだ海賊の船にいるんだ。だから逃げないよ。僕が、ふたりを助けるんだ」
 大きく揺れた船の上にいるシャロンと王様に近づいたクウは、「クウ」と声を出すと、ふたりに捕まるようにと背中をむけます。
 そのクウの背にシャロンと王様が乗った時、海賊たちの大きな船がひっくり返りました。

「俺たちが悪かった。降参だ。助けてくれ」
 溺れながら海賊たち全員がクウとシャロン、王様を見て言います。
 その海賊を見たシャロンは、クウの首を軽く叩くといいました。
「クウ、お願いがあるの。あの人たちを助けてあげて。あとは私たちが責任をもって、彼らを反省させるから」

 シャロンの頼みを聞いた、クウのお父さんが仲間たちに指示を出します。
 そして、優竜たちは海賊をひとりずつくわえて背中に乗せていきました。
 こうして、島には平和が戻ってきたのでした。
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