水平線にとどく唄
友だち
 クウは人間に会ったら殺されてしまうとばかり思っていました。
 けれどシャロンは、クウがお母さんから聞いた人間とは、すこし違うようです。

「立てる? 痛みはもうない?」
 シャロンに言われてクウは立ち上がってみました。
 すると、足の痛みは嘘のようにひいています。
 シャロンが治療してくれたからです。
 クウは嬉しくて、たくさん歩いてみせました。
 喜んで歩くクウを見て、シャロンも嬉しそうに笑います。

 ――やったー。これなら家に帰れる。
 そう思ったクウでしたが、嵐で流されてきたために家がどちらの方角にあるのか、わかりませんでした。
 ――どうしよう。どうやって家に帰ろう。お母さんは心配しているだろうな。
 クウが困っていると、シャロンが声をあげました。

「みんな、この子を助けたいの。出てきて」
 すると、シャロンの家からたくさんの人間が出てきます。
 そして、全員、海にむかって歩きはじめました。
 人間の行列の一番後ろについて、クウも歩きます。
 辿り着いた港にはシャロンが頼んで出してもらった船がありました。
 それはクウが見た、どの船よりも大きいものでした。

「では、あちらの方角に舵をむけてください」
 船に乗り込んだシャロンが進む方角を示します。
 大きな船が動き出すと、クウは船についてきました。
 今日は青空が広がり、海も奇麗な青に染まっています。

 ――もうすぐ家に帰ることができる。
 はやる気持ちをおさえながら、クウは船を追い越さないよう、ゆっくりと進みました。
 しばらくすると、水平線に見慣れた島が見えてきました。
 クウの住んでいる島です。
 ようやく家に帰れる。ほっとしたクウはお母さんを呼ぶ声を出しました。
 クウ、クウ、クウと。
< 7 / 27 >

この作品をシェア

pagetop