殺人と笑顔と温もりと







野菜とかお肉とか

詰まった袋を握りしめていると




野次馬の中に紛れ込む

1人の人に目がいった




鉛色の空の下

佇んでいる

黒髪の男性

眼鏡をかけているようだ




暫く男性は

『keep out』と書かれた

黄色いテープを見つめていたが

やがて

興味を失ったかのように

人混みに踵を返して

どこかへ行ってしまった



離れていたから

よくは見えていないけど





何故だろう?




あたしには

男性の周りだけ

空気が違うように見えた





まるで―――










「事件が起こるのを
知っていた……?」





あたしの呟きは

野次馬の声に消えた








< 27 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop