殺人と笑顔と温もりと
あの野次馬の中で見つけた
黒髪で眼鏡をかけた彼を
帽子を被っていて
少し寒そうに見えた
気が付けば急いで傘を持って
彼の元へ駆け寄っていた
気になったから
少しでも知りたいと思ったから
そして
今に至ると言うわけです
目の前の彼は
殆(ほとん)ど何も話さないで
淹れたお茶を飲んでいる
お菓子を出せないあたしが悔しい
何も話さないし
帽子を深く被っているせいで
眼鏡をかけていることぐらいしか
顔が見えない
帽子から少し出た黒髪は
あたしとは違って綺麗で
柔らかそうだった