殺人と笑顔と温もりと






あたしは頭を下げた

彼の腕を掴む力を強くした




「お願いします
無茶だってわかってます

お願いしますっ……」




じんわりと視界が滲(にじ)みだし

涙が出てきた

ポタポタと涙は流れて

彼のセーターに染み込んでいく





彼は小さく溜息をつくと

あたしの涙を指で拭った

綺麗でほっそりとした白い指が

あたしの涙を優しく拭ってくれた




「僕は…最低な人間です
それでも良いのですか」

「構いません
あたしだって最低ですから」





あたしはセーターを脱いだ

一緒に彼も脱いだ






「お願いします……」





久しぶりにあたしは

温もりに触れられる






< 43 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop