殺人と笑顔と温もりと
「名前
聞いても良いですか」
恥ずかしくって
俯きながら聞いてみると
彼は静かに首を横に振った
「教えられません
もう2度と会うつもりはありませんから」
やっぱり彼は
哀しげに見えた
「どうすれば
また会うこと出来ますか」
手放したくなかった
イケメンで
だけどどこか哀しげな彼を
あの現場に
未来がわかるかのように立っていた彼を
優しくあたしを抱いてくれた彼を
手放したくなんてなかった
「……失礼します」
彼はやっぱり淡々と
感情のこもっていない声で言うと
あたしへ踵を返した