殺人と笑顔と温もりと
玄関へ向かって行く彼に
あたしは見ていて苦しくなった
行かないで
お願い
傍に居てよ
そんな気持ちが
心の中で激しく渦巻く
台風のように
激しく
激しく
だけど何も言えない
何も言えないあたしがもどかしい
心の中では叫んでいるのに
心の中では泣いているのに
何も言えないあたしが
憎い
何も言えないまま
彼の背中を見ていると
ふと彼が止まった
そして
糸の切れたマリオネットや
電源の切れたロボットのように
彼は膝から崩れ落ちた