殺人と笑顔と温もりと
眼鏡の奥の不安げな瞳が
あたしをしっかり捉えていた
憎い人
そう言われて
すぐに思いつく人がいた
「います」
即答すると
彼は弱々しく笑った
「誰ですか」
「隣に住んでいる人です
いつも隣で騒いでいて
うるさくって仕方ありません
あたしが持っていないものも
沢山持っています
憎くて憎くてしょうがないです」
恋人も家族も友達も
あたしが一生得られないような幸せを
簡単に隣人は手に入れている
「わかりました」
彼は幽霊のように
ふらりと立ち上がると
玄関へ向かった