殺人と笑顔と温もりと
8
お風呂から上がると
彼はあたしの読んでいた本を読んでいた
パジャマ姿で
火照るあたしを見た彼は
一瞬見たものの俯いてしまった
その表情は
痛いほど
哀しみに溢れていた
「あの……」
声をかけると
彼は顔を上げて
本を閉じた
「良い
お話ですね…コレ」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声が出る
コレは
あたしが読んで
今は彼が読んでいる本のことだ