殺人と笑顔と温もりと
病院へは何度も行こうとした
僕は僕が異常だと知っているから
だけど逮捕はされたくなかった
あの日…
僕が両親と妹を失ったあの日
警察に連れてかれる“おじちゃん”を見た
げっそり痩せ細った“おじちゃん”
逮捕されるとああなるんだと悟った
誰かに救ってほしかった
誰かに助けてほしかった
しょうがないんだ、と甘んじて
人を軽々と真っ赤に染めてしまう僕を
そこで目が覚めた
目が痛くて
頭痛もして
喉は乾いて
呼吸が荒かった
彼女は僕の手を握りながら
穏やかな寝息をたてていた
不思議と
彼女を殺したいとは思わない
むしろ
―――大事にしたいと思う