まだ本当の恋を知らない
そこに携帯の着信が響きわたった。

ふと、我にかえり部長から顔をそらす。

チっと、舌打ちする部長。

その脇を抜けて画面を見ると海斗から。

迷ったが、この空気を戻すにはこれしかないと電話に出ることにした。

「もしもし?
え、今残業してる。

これから?

分かった、後で。」

「…………」

「…………」

「部長、今日は帰ります。明日の午前中には提出します。」

「男か?」

「……いいえ、急用で。」

カッコよすぎる部長にただ流されただけと自分に言い聞かせるため、今日は海斗に会おうと決めた。 

海斗で癒されたらまた、いつもの私になれる、そんな気がした。
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