まだ本当の恋を知らない
海斗とのいつもの待ち合わせ場所に着くと海斗はもう来てお酒を飲んでいた。

その横に黙って座ると、

「お待たせぐらい言えよ!」

と、私の頬をキュッとつねる。
海斗の少し茶色かかった柔らかそうな髪、少したれ目な優しい瞳が驚いたように大きくなったものの、すぐさまいつものように穏やかな顔でじっとみつめる。

この顔に気持ちも落ち着くが、やっぱり胸キュンもドキドキもない。

「なんだよ、元気ないじゃん。どーした?」

黙っている私の顔にそっと近づき覗きこむ。

先程の部長と重なりあの意地悪な爽やかスマイルを思い出してしまう。

「あぁー、入り込んでくる…」

意味の分からない海斗を他所に彼の注文していた料理をつまんで食べた。

「わっけわかんねー女」

からから笑いながら、海斗も食べ始める。

そう、私と海斗の関係はこんな感じ。

恋人というより親友のような…

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