冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
奪われた彼
先日、私は恋人を奪われた。
「だから言ったのよ。
交際を内緒にする男なんて信用できないって。」
「だって社内恋愛ってそう言うもんだって…言われてたから…。」
「それは平岡から言われただけでしょ?
社内恋愛禁止じゃないし、実際に社内結婚だっているし、
くっついたり離れたりしててもクビになんてなんない!」
親友で同期の友永今日子が当事者の私より怒りをあらわにしていた。
私は2年間付き合っていた、やっぱり同期の平岡成二からクリスマス前、いきなり突きつけられた別れ。
『夏希、ごめん、もう付き合えない。』
このひと言で、成二は私に別れを告げ去って行った。
成二も含め、私達は同期が仲が良く、週末は飲み会だ、休日はバーベキューだとことあるごとに集まっていた。
一緒にいる時間が長く、気の合う成二と自然に付き合うようになった。
別れを告げた時の成二は、私と目が合ってるような合ってないような視線を向けていたが、その瞳からは何も感じられなかった。
ただ…少しだけ淋しそうに見えたのは、私のちょっとした期待だったのかもしれない。
元々、私は感情を表に出す事が苦手だったから、別れを告げる成二の前では理由も聞かず「わかった」とだけ答えた。
その後、成二が少しだけホッとした顔を見せて、そのまま去ってしまった。
今日子が怒ってるのは、私が理由も聞かずに、すんなりと別れを受け入れたこと。
私だって、いくら考えても自分には別れる原因が見当たらず、冗談かと思ったくらい。
『どうして?』
気が付かないうちに、成二が気に入らないことをしていた?
このまま付き合って結婚するんだろうなと漠然と思ってたのは私だけだったってことか…。
成二から別れを告げられて間もなく、成二と同じ部署の小沢玲奈と、婚約をしたと言う噂が飛び込んで来た。
彼女もやっぱり私達の同期で、そんな素振りはまったく見せていなかった。
婚約した理由は・・・
彼女の妊娠がわかったから。
『そう言う事か…。』
ジワジワと訪れる悔しさと悲しみ。そして空しさ。
同期にも付き合っていたことを秘密にしていた私と成二の交際は今日子と先輩だけが知っていた。
付き合い当時から、なんで秘密にしてるの?
同期だけにでも言えば良いじゃん。
と今日子は不信感を抱いていたが、それがこの結果になった時、心底怒って、それ以来、成二とは仕事以外では口もきいていないらしい。
同期の集まりにも行きづらくなって、私は参加していない。
遠慮してなのか、今日子も行ってないようだった。
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